罰ゲーム 6
 次の土曜日。午後1時30分。外は小雨が降っていた。
俺はこの時、たった1人自分の部屋でナオが来るのを待っていた。
彼とのゲーム対戦の舞台はすでに整えられていた。
20インチのテレビの前には緑色の座布団が2枚敷かれ、ゲーム機はすでに床の上に出されていた。 そして2つの黒いコントローラーはコードが真っ直ぐに伸ばされていた。
外は雨降りでも部屋の中は十分に明るかった。
白く光る板張りの床は雨のせいか湿気を帯びていて、靴下をはかない足でその上を歩くと足の裏が少しベタベタした。

 窓際のベッドには白いシーツがピンと張ってあり、フカフカな枕がその上にポツンと置かれていた。 ギシッと音を立ててベッドの上に乗っかると、手に触れたシーツも少しだけ湿気を含んでいるように感じた。
俺はベッドの上に正座して窓を覆う薄いレースのカーテンを漠然と眺めた。 両手で静かにカーテンを開けると、小さな雨粒の付いた窓ガラスが目の前に現れた。
雨に濡れたガラスの向こうに見える空は薄い灰色だった。部屋の中には小雨の降りしきる音がシトシトと響いていた。
俺はその音を聞きながらこの1週間の事をぼんやりと思い返した。
俺はこの1週間、ずっと淫らな妄想にふけっていた。
授業中にナオの背中を見つめている時は彼が教室でおもらしする場面を頭に浮かべた。 彼が椅子に座ったままおもらしをして、制服のズボンが灰色から真っ黒な色へと変わっていく様子を何度も頭に思い描いた。
夜布団に潜ってからはナオが俺の部屋でジーンズを濡らしてしまった時の事を何度も何度も思い出した。 頬を染めて気持ちよさそうにおもらしして、床の上に水たまりが広がっていく様子を鮮明に頭の中でリピートした。
すると必然的にいつも股間がうずいた。
俺はこの1週間で何回マスターベーションをしたか知れない。
ずっとそんな時を過ごしていたからなんとなく腰が重かったし、右手の指がすごく疲れているように感じた。

 きっともうすぐナオがこの部屋へやってくる。彼はきっとまたここでおもらしをして、湿気を帯びた床の上を更に湿らせるのだ…
先週この部屋でナオがおもらしした時の事を思い出すと、しだいに股間が膨らんできた。 でも先週の自分の行いを思い出すと、激しい羞恥心が込み上げて頬が熱くなった。
ナオの目の前でおもらしするなんて…いったいどうしてあんな事をしちゃったんだろう。
俺は悪魔の囁きに負けた自分を心から恥じていたし、おもらししてしまった事をすごく後悔していた。
そして俺は思った。ナオも1人になった時、俺と同じく後悔にさいなまれているのではないか…と。
「はぁ…」
ため息をついて腕時計に目をやると、もうすぐ午後2時になる事が分かった。
そろそろナオがやってくる時間だ。
俺は黙ってベッドを降り、ナオが来る前にトイレで用を足す事にした。 また悪魔の囁きに負けて、おもらししてしまう事がないように…

*   *   *

 「外は風が強くなってきたよ」
午後2時10分。俺の部屋へやってきたナオは、ドアの前に立って雨に濡れた長い髪を両手でサッと整えた。
ナオはこの日、青い傘をさして俺の家へやってきた。でもその途中で強風に煽られ、傘の骨が1本折れてしまったと言っていた。
俺は彼の出で立ちに注目した。
彼はこの時例のビンテージもののジーンズをはいていた。最初の時に彼が濡らす事を拒んだ、あの色褪せたジーンズだ。 彼の上半身を包み込む紺色のトレーナーは、そのジーンズとすごくよく合っていた。
俺はナオの服装を見た時、今日のゲーム対戦に向かう彼の意気込みを感じた。
自分は決してお気に入りのジーンズを濡らさない。今日は必ずゲームに勝つ。
ナオの服装は、彼のその強い決意を代弁しているかのように思えた。
「わぁ、準備万端だね!」
やがてナオはゲーム対戦の舞台がしっかり整っている事に気づき、テレビの前の座布団にちょこんと腰掛けた。
彼はそれからすぐに両手でコントローラーを掴み、鼻歌を歌いながら機嫌よくキャラクターを作り出す画面をテレビに映し出した。
この日のナオは自信に満ち溢れていた。
俺は余裕たっぷりなナオの隣へ静かに座り、心の中で彼の決意を蹴飛ばした。
今日はなんとしてもナオの大事なジーンズを濡らしてみたい。いや、絶対に濡らしてみせる。
俺はナオの白い頬を横目でチラッと見つめ、彼とは逆の決意を固めていた。

 部屋の中には相変わらず小雨のシトシト降る音が響いていた。そして時々強風に煽られて揺れている街路樹の葉の音も聞こえてきた。
2人とも自分の動かすキャラクターを作り上げると、俺たちは黙ってじっと正面を見つめた。
正面のテレビ画面の中では、バーチャルなナオと俺が四角いフィールドの真ん中ですでに睨み合っていた。
ナオはいつものように自分の動かすキャラクターに面長な顔を与え、真っ白な柔道着を着せていた。 そして気まぐれな俺は赤いジャージ姿の四角い顔をした男を自分の動かす戦士として作り上げていた。
「ナオ、今日の罰ゲームは?」
一瞬の沈黙の後、俺はナオに1番大切な質問を投げ掛けた。
ナオはテレビの画面をじっと見つめたまま力強い口調ですぐに返事をしてくれた。
「最後にもう一度だけリベンジしたい」
彼にそう言われた時、俺は複雑な思いでもう一度ナオの横顔を眺めた。
自信に満ちた目でテレビを見つめるナオはとても愛らしかった。
肩の上で跳ねている長い髪も、大きな目も、すぐに赤く変化する真っ白な頬も、すべてがとても愛しく感じた。
勝っても負けてもおもらしを賭けて戦うのは今日で最後になる。
そう思うと、残念な気持ちとほっとしたような気持ちが胸の中で交錯した。
頬を赤く染め、気持ちよさそうな顔をしておもらしする時のナオはとても可愛い。だから、できれば毎日でもその様子を見ていたい。
でもきっと彼も俺と同じようにおもらしした後どうしようもなく後悔を繰り返していたに違いない。
今の俺にはその気持ちが分かるから、今日限りで彼のおもらしする姿を見られなくなってもそれはしかたのない事だと思っていた。
そうさ。とても残念だけど…これはしかたのない事なんだ。
「よし、じゃあ…始めるぞ」
俺はそう言ってゆっくりとゲームのスタートボタンを押した。
そして俺たちの壮絶な戦いが幕を上げた。

 バン、バン、バン…
先に攻撃を仕掛けてきたのはナオの方だった。
俺はナオの戦い方がいつもと違っている事が分かり、最初から少し戸惑いを感じた。
ナオはキックが得意な分、若干パンチを不得手としていた。しかし俺はナオのパンチの技術がかなり向上している事にすぐ気づいた。
バン、バン、バン…
ナオが連続して繰り出すパンチは目にも見えない早さで確実に俺の腹を捉えた。
どんなに目を凝らしても彼がパンチを繰り出すタイミングがよく分からず、俺はひどく苦戦した。
やばい。今日のナオはいつもと全然違う。こいつ、この1週間でかなりの練習を積み重ねてきたようだ。
そう思っている間にもナオのキレのいいパンチが次々と炸裂し、赤いジャージ姿のバーチャルな俺はフィールドの真ん中で何度もよろけた。
ナオは俺がパンチを繰り出すタイミングを完全に把握していた。俺が腕を振り上げる前に、ナオのパンチがいつも先に俺の腹を攻撃した。
俺のスタミナを示す赤いバーはゲームを開始してから1分足らずですでに4分の1ぐらいが減っていた。
俺の得意な連続パンチはナオの技術によって完璧に封じられていた。
ダメだ。このままじゃダメだ。何か作戦を考えなくちゃ。このままナオに攻められ続けたらあっという間に勝負が決まってしまう。
赤いジャージ姿の俺は四角いフィールドの中を逃げ回るしかなかった。 少なくとも相手の攻撃を避けている間はスタミナが減っていく事はない。
俺は恥をしのんで逃げ回りながらその間になんとかして必勝法を考え出そうと思っていた。 でも当然のように右へ逃げても左へ逃げても柔道着姿のナオはダッシュして俺を追いかけてきた。

 「弱虫。さっきから逃げてばかりだよ」
ナオは楽しげにそう言いながら軽やかな足取りで俺をフィールドの隅に追い詰めた。
バン、バン、バン…
後ろへ下がれなくなると、左右へ回りこむ前に素早いパンチを何度も浴びた。 接近戦は俺が得意とする手法だったのに、この日の俺はナオにお株を奪われたような状態だった。
ドカッ…
しかもナオはそれだけでなく、数回パンチを浴びて俺がひるむとその瞬間効果的に得意の飛び蹴りを繰り出してきた。
赤いジャージ姿の俺は、きつい飛び蹴りを食らってフィールドの外へ押し出されそうになった。
バン、バン、バン…
ナオの繰り出すパンチを凝視すると、あっという間に目が疲れてきた。
その時になって気づいても遅すぎたけど、自分のキャラクターに赤いコスチュームを与えたのは得策とは言えなかった。 前後左右に動き回る赤の色は、チカチカして俺の目に更に疲労を与えた。
そして、問題はもう1つの赤の色だ。
テレビ画面の上部に表示される、2人の戦士のスタミナを示すバー。
そのうちの1つはあっという間に半分ぐらいまで減っていた。それはもちろん俺のスタミナを示すバーだった。

 やばい!
そう思った瞬間だった。
ドカッ…
その鈍い音と共に、真っ赤なジャージを着た俺がフィールドの端から端へと吹っ飛んだ。 俺はまるで軽いぬいぐるみのように宙を舞って四角いフィールドの床に叩きつけられた。
すると視線の隅に急降下していく赤いバーがぼんやりと映し出された。
地面に叩きつけられた俺は、フラつきながらも慌てて立ち上がった。
「智行、もっとがんばってよね」
半分笑いながらナオがそう言った。彼はすっかり俺をもてあそんでいた。
フィールドに倒れた俺の上に彼が圧し掛かったら、勝負はその時決まるはずだったのだ。
しかしナオは攻撃を畳み掛ける事をしなかった。 余裕たっぷりな彼は、俺を散々いたぶった上で勝ち名乗りを上げようとしていたのだ。
でもそれにはまだ早すぎたらしい。この時はまだ俺たちの戦いが始まって3分も経過していなかった。
その時俺はナオのお情けでフィールドの上に立っていたのだ。

 ダメだ。もっと集中しないと。このままでは勝ち目がない。
そうは思っても俺には対策がなかった。
ナオの飛び蹴りは天下一品だ。彼は細かいパンチを何度も繰り出して俺がひるむとその瞬間に鮮やかな飛び蹴りを放つ。
これを繰り返されたら、絶対に勝ち目なんかない。
バン、バン、バン…
サンドバッグのように殴られ続ける俺の動きがしだいに鈍くなってきた。 スタミナが減ったために、機敏に動く事が困難になってきたのだ。
バン、バン、バン…
まただ。また見えないパンチが俺に浴びせられた。この後あの天下一品の飛び蹴りが繰り出される。
今度吹っ飛ばされたら、本当にゲームが終わってしまう。

 やばい!
ナオが飛び蹴りを繰り出す。俺はその瞬間がはっきりと分かった。 彼は俺がひるんだ瞬間、まったく間を置かずに素早く飛び蹴りを披露するのだ。
ナオの両足が宙に浮き、その爪先が俺の四角い顔めがけて突き刺さろうとしていた。
これを避けないと、本当に負けてしまう。
そう思った瞬間、俺はサッと腰を低くして彼のキックを空振りさせた。
俺のスタミナは残り少なくなっていた。 しかし俺はギリギリになってようやく今日のナオに勝つ方法を見出したのだった。それは先週使った手の応用だった。
飛び蹴りが失敗すると体勢を立て直すのにわずかな時間がかかる。俺はその瞬間にナオに負けないほど素早いパンチを何度か繰り出した。
それは相手にそれほど大きなダメージを与えるものではなかったけど、この際そんな事はどうでもいいのだ。
ナオは元々キックが得意だ。彼にとってパンチは小技でしかない。 彼の決め技はやはり飛び蹴りだ。その飛び蹴りさえなんとかして避ければ、ナオはきっとイライラし始めるはずだ。
俺はこの時まで小さな事にムキになるナオの性格を忘れていた。彼が熱くなってくれれば、きっと勝利は俺の手に転がり込む。
バン、バン、バン…
体勢を立て直したナオはさっきと同様素早いパンチを俺に浴びせてきた。しかし俺はその攻撃を甘んじて受けて立った。
俺は彼の飛び蹴りを避ける事にだけ集中した。
ナオが得意の飛び蹴りを繰り出すのは、俺がひるんだ瞬間の事だ。
俺はそのタイミングを計って腰を落とし、天下一品の飛び蹴りをことごとく避け続けた。

 「あーもぅ!」
飛び蹴りがまったく俺に命中しなくなると、ナオはイライラして大きく声を上げた。
彼が我を失うと、もうこっちのものだった。
ゲームの技術は対等かもしれないけど、相手の心を読む力はナオよりも俺の方が絶対的に優れていた。
「目がチカチカする!」
ナオが腹立たしげにそう叫んだ。
バーチャルな俺に赤いジャージを着せた事がここで生きた。 フィールドの中を動き回る赤の色はナオの目にもちゃんと疲労を与えてくれたようだった。
俺たちは後半互角の戦いを演じた。
ナオは得意の飛び蹴りを決める事に心を奪われ、彼のパンチは明らかにスピードが落ちていた。 少しずつ少しずつスタミナが減っていくと、白い柔道着姿の彼はしだいに動きが鈍くなってきた。
やがて俺とナオのスタミナを示す赤いバーがまったく同じ数値を示した。
もうお互いに機敏な動きをする事はできなかった。
しかしナオはまだ飛び蹴りを繰り出す事をやめようとせず、のんびりとした動きで両足を俺の顔面に向かわせた。
そして俺ものんびりとした動きで腰を落とし、ナオの飛び蹴りをゆっくりと避けた。
白い柔道着姿のナオは案の定飛び蹴りを失敗し、自らフィールドの上に倒れて死を迎えた。

GAME OVER

真っ黒なテレビ画面に、黄色のその文字が躍った。
部屋の中には小雨の降りしきる音がシトシトと響いていた。
ナオの手からコントローラーが零れ落ち、彼は湿気を帯びた床の上に両手をついて泣き崩れた。
彼の泣く声が、シトシト降る雨の音をかき消した。

*   *   *

 「悔しい…」
ナオは両手を床の上について俯き、鼻をグスグス鳴らしながら何度もそうつぶやいた。
彼の頬を伝う涙の粒が座布団の上にポロポロと降り注がれ、そこだけ黒く染まった。
「今日のために1週間ずっと練習してきたのに…悔しい」
座布団の上に降り注がれる雨粒がどんどん増えていった。
俺は緑色の座布団に染みていく涙の粒をぼんやりと見つめ、ナオの柔らかな髪をそっと撫でた。
思った通り、ナオはゲームに勝つために相当な訓練を積んできたようだった。 悔しがって泣き崩れる彼の姿を見ると、その事が本当によく分かった。
俺が淫らな妄想にふけっている間、ナオは必死にコントローラーを握り締めて戦いの準備に励んでいたのだ。
しかし皮肉な事に彼のおもらしする姿を見たいと願う俺の思いがナオの努力を上回ってしまったようだった。
「ナオ、そんなに勝ちたかった?」
遠慮がちにそう問い掛けると、ナオは顔を上げて俺の目を真っ直ぐに見つめた。
涙を流し続ける彼の大きな目は真っ赤になっていた。そして頬も同じように赤く染まっていた。
「勝ちたかった。絶対勝ちたかった!」
俺は必死にそう訴える彼の迫力に圧倒された。ナオがこれほど率直に感情を表す事はすごく珍しい事だった。

 ある時、ゴーッと強い風の音が部屋の中に響いて一瞬家全体がグラッと揺れた。体にその衝撃が伝わった瞬間、ナオが突然スクッと立ち上がった。
「ナオ?」
その時俺は口を開けて彼の行動をぼんやりと見つめていた。
座布団の上に立ったナオはカチカチと音を立てて腰に巻かれたベルトのバックルを外し、ビンテージもののジーンズと一緒に淡い水色のトランクスを下ろしてそれをバサッと床の上へ投げ捨てたのだった。
俺はその時びっくりして何も言えなくなってしまった。
座布団に腰掛ける俺の目の前に半分立ち上がったナオのものが堂々と晒された。 薄っすらとしたヘアーも、牛乳みたいに白い足も、同時に目の前に晒された。
「罰ゲーム、忘れてないよ」
ナオは涙をいっぱいためた悩ましげな目で俺を見下ろし、掠れた声でそう言った。
「このジーンズ、濡らしたくないんだ。だから…オムツして」
彼は同じ口調でそう続けた。それからナオはゆっくりとベッドに飛び乗り、白いシーツの上へ仰向けになってそっと目を閉じた。
雨に濡れた窓ガラスの向こうから外の光が差し込み、ナオの真っ白な足を輝かせた。
彼の乾ききらない頬はまだほんのり赤く、軽くシーツを握り締める小さな手がとてもいじらしかった。
柔らかな光に照らされるナオは本物の天使のようだった。彼はきっと、背中に白い羽を持っているに違いない…
俺は本当はナオがお気に入りのジーンズをはいておもらしする事を望んでいた。 でもこの時は彼に紙オムツを着けてあげたいという気持ちが大きくなっていた。
ナオはジーンズを濡らしたくないと言ったし、彼は紙オムツの感触をこよなく愛している。 おもらしを罰ゲームにするのは今日で最後だから、できればナオの思うようにさせてやりたいと思った。

 俺はそっと立ち上がって押し入れに近づき、黒い衣装ケースの底から紙オムツの入った白いビニール袋を取り出した。
降りしきる小雨のせいで、衣装ケースの中の洋服もなんとなく湿って重くなっているような気がした。
ナオのために紙オムツを使うのも今日で最後になる。そう思うと、言い知れぬ淋しさが胸に込み上げてきた。
ビニール袋を抱えてベッドへ飛び乗ると、俺はすぐにナオの足元へ腰掛けた。
いつものように彼の両足を膝から折り曲げ、そっと大きく開かせる。
半分立ち上がったナオのものを間近に感じると、俺の股間がまた少しずつ膨らみ始めてしまった。
「ねぇ…早くオムツして」
シトシト降る雨の音をバックに、ナオが小さくそう言った。彼はこの時、はっきりと紙オムツを欲していた。
「待って。今すぐ着けてあげるからね」
俺がそう言ってやると、ナオが微かに微笑んだような気がした。 彼は軽く目を閉じたまま窓の方へ顔を向け、右手の小指を自分の唇へそっと近づけた。
もうすぐナオのおもらしする姿が見られる。そう思うと俺はすごく興奮してきた。
もうビンテージもののジーンズを濡らしてほしいなんてわがままは言わない。 とにかく、なんでもいいからナオがおもらししてくれたらそれでいい。
俺は早くその瞬間が見たかった。だから張り切って白いビニール袋の中へ手を入れ、そこから急いで紙オムツを取り出そうとした。

 しかし、俺はそこで重大な事実に気がついた。ビニール袋の中には紙オムツがたったの1枚しか残っていなかったのだ。
これは俺にとって大問題だった。
小学校3年生の弟は、毎晩必ず紙オムツを身に着けて眠る。
紙オムツは最後の1枚を使った翌日母さんが新しい物を買って補充するというのが長年続くパターンになっていた。
それを考えると、ここで最後の1枚を使ってしまう事は到底できないと思った。
夜になって母さんと弟が紙オムツの在庫がなくなっている事に気づいたら、必ずオムツを預かっている俺がその理由を問いただされる。
そんな事になったら、大変だ。
「やばい…」
小さくそうつぶやくと、窓の方を向いているナオがゆっくりと目を開けた。
シトシト降る雨の音に混じって、外から強い風の音が聞こえてきた。
「どうしたの?」
ナオはのん気にポリポリと鼻の頭をかきながら俺の目を見つめてそう言った。
紙オムツの装着を待ちわびている彼はその時が近い事を信じて軽く笑顔さえ浮かべていた。
「ナオ…紙オムツは使えないよ」
率直にその事実を告げると、ナオの表情が突然強張った。彼は体を起こして白いシーツの上に座り、俺に説明を求めた。
「どうしてダメなの?紙オムツはちゃんとあるんでしょう?」
ナオは少し膨らんだビニール袋を見つめて口を尖らせた。
彼の目の前にある大好物を取り上げるようで申し訳なかったが、俺はとにかく紙オムツを使えない訳をナオが納得するように説明するしかないと思った。
「ここに入ってるの、最後の1枚なんだ。今ナオがこれを使っちゃったら、今夜の弟の分がなくなるんだよ。 紙オムツがなくなってる事が分かったら、母さんと弟にその訳をしつこく聞かれる事は目に見えてる。 そうなったら…俺たちの秘密がばれちゃうよ」
ナオは瞬時に俺の言う事を理解したようだった。 彼は膝を抱えて伏し目がちに俯き、板張りの床の上に投げ出されているお気に入りのジーンズにチラッと目をやった。
「智行の言う事は分かるけど、このジーンズを濡らすのは嫌だ。僕…オムツを着けておもらししたい」
ナオはゆっくりと顔を上げ、潤んだ目で恥ずかしそうに俺の目を見つめた。
この時俺はすごく興奮していた。 ナオの口からはっきりオムツにおもらししたいという言葉を聞くと、どうしても興奮せざるを得なかった。
できれば最後の紙オムツを今すぐナオに着けて彼の望みを叶えてあげたかった。 でも…それができない事がすごく苦しかった。
俺はナオの肩に手を置いて彼の潤んだ目を見つめ返した。
「ナオ、よく聞いて。 もしも今回の事がばれて、それが母さんや弟の口から学校の皆に伝わったらどうする? それはあり得ない話じゃないぞ。ナオだって俺の母さんの事はよく分かってるだろ?」
彼にそう言い聞かせると、赤く染まったナオの頬に大粒の涙が降り注がれた。
ナオとは幼なじみだから、彼は俺の母さんの事をよく知っていた。 こんな事は言いたくないが、母さんはものすごくお喋りだった。
膝を抱えたナオは溢れ出す涙を拭おうともせず、自分がどうするべきかを考えているようだった。

 やがてナオの小さな手が彼の足元に転がる白いビニール袋を持ち上げた。 彼はその中をそっと覗き、そこに残っている紙オムツが1枚しかない事を確認した。
現実を目の当たりにしたナオはぼんやりと視線を宙に浮かせた。
この時ナオの下半身は丸裸だった。 彼はその事が急に恥ずかしくなったのか、トレーナーの裾を引っ張って半分立ち上がっている自分のものをサッと覆い隠した。
その仕草はとても可愛かった。 ナオは自ら大胆にジーンズとトランクスを脱ぎ捨てたくせに、急に恥じらいを見せるそのギャップがたまらなく愛しく思えた。
彼の可愛い一面を見ると、俺の胸にまたあの欲求が蘇ってきた。
ナオが大事なジーンズを濡らすところを見てみたい。 彼がたっぷりおもらしをして色褪せたジーンズがびっしょり濡れてしまうのをこの目で見てみたい…
シトシト降り続く雨の音と、ドキドキする俺の心臓の音が耳の奥で重なった。
興奮気味な俺は赤く染まったナオの頬を両手で包み込んだ。俺はその時どうしてもナオに触れたかったんだ。
俺はもう自分の思いを抑える事ができなかった。
俺をこんなに興奮させるのはナオしかいなかった。俺をこんなにドキドキさせるのはナオだけだった。

 「ナオ、好きだよ」
ほんの短い言葉で思いを伝えると、彼は濡れた目でじっと俺を見つめ、前歯で下唇をきつく噛んだ。 それは彼が緊張している時に行ういつもの癖だった。
両手で包み込むナオの頬がこれまで以上に赤く染まった。俺の掌にはその頬の温かさがじわじわと伝わってきた。
「ナオはすごく可愛いよ。 特におもらししてる時のナオは最高に可愛いと思うんだ。 俺、この1週間ずっとナオの事ばかり考えてた。 ナオが制服のズボンを濡らしちゃうところとか、ジーンズを濡らすところとか…ずっとそんな事ばかり頭に浮かべてたんだ。 今日で最後だから、頼むよ。俺、ナオにジーンズをはいておもらししてほしい。濡れたジーンズはすぐに洗濯してあげるから。だから…お願い」
俺を見つめるナオの目は濡れて光っていた。小雨に濡れた窓ガラスのように、キラキラと光っていた。
俺は彼がどう返事をするか想像がつかず、ただドキドキしてその目を見つめていた。
そのうちに小雨のシトシト降る音が耳から遠ざかっていった。外の雨はだいぶ小降りになったようだ。
雨雲の隙間から顔を出したわずかな太陽の日差しが一筋の光となってナオの頬を照らした。
やがてトレーナーの裾を引っ張っていたナオの両手が彼の頬を包み込む俺の手に重ねられた。
ナオの指が軽く手に触れただけで俺の股間にぶら下がるものが火傷しそうなほど熱くなった。
するとその時、緊張気味に唇を噛んでいたナオが何かを言おうとして口を動かした。
彼は俺の手の上に重ねた自分の両手にぎゅっと力を入れ、恥ずかしそうに小さな声でこう言った。
「いいよ。僕、智行のためならお気に入りのジーンズを濡らしてもいい」
「本当?」
即座に聞き返すと、ナオが少し微笑んで小さく頷いた。
俺はすごく嬉しくて、天にも昇るような気持ちだった。

 しかしその余韻に浸っているヒマはなかった。
ナオはその後急に両足を震わせ、強い尿意を感じ始めている事を俺に告げた。
「智行、おしっこ。もう我慢できない」
ナオは表情を硬くして再び唇を噛み締め、更に大きく両足を震わせた。
俺は慌ててベッドを飛び降り、床に転がる色褪せたジーンズをサッと拾い上げた。 するとその時、ジーンズと重なっていたナオのトランクスがポトリと俺の足元に落ちた。
俺はふとある思いが頭に浮かび、トランクスはよけておいてジーンズのみをナオにはかせる決断をした。
ナオはベッドの端に腰掛け、両足を床に下ろしてバタバタと足踏みを始めていた。彼の小さな右手は股間を強く押さえつけていた。
さっきまで赤かった彼の頬は青白く変化していた。そして真っ白な額には脂汗が浮かんでいた。 ナオが細かく足踏みを繰り返すと、肩の上で跳ねている長い髪が小さく揺れ動いた。
「ダメ…本当に出ちゃう」
ナオは泣きそうな声で俺にそう訴えた。一筋の太陽の日差しが、切羽詰った彼の背中を明るく照らしていた。
「待って。今ジーンズをはかせてあげるから」
俺はかなり焦って床の上にしゃがみ込み、まずはナオの両足をジーンズへ通そうとした。
しかしナオは足踏みを止めるとおしっこが出てしまいそうだと言い、たったそれだけの作業にやけに時間がかかってしまった。
「智行、もうダメ」
ナオの呻くような声が耳のすぐそばで響いた。俺はこの時やっとなんとかジーンズにナオの両足を通したばかりだった。
あまりにも焦っていたせいか、そのうち俺の額にも汗が浮かんだ。

 「ナオ、腰を浮かせて」
「できない」
彼は俺の要求に答える事ができず、きつく目を閉じてジーンズに通した両足をバタつかせた。
ナオはもう立ち上がる事さえ困難な状態だった。
でもダメだ。彼がベッドの上でおもらししたら大変な事になる。 もしも布団がびっしょり濡れてしまったら、それを隠す術がない。
「ナオ、一瞬だけ我慢して。お願いだから」
俺はそう言って強引にジーンズを引っ張り上げ、ナオの下半身を包み込んで素早くジッパーを閉じた。
するとナオは即座にジーンズの上から右手で股間を押さえた。かっこよく色褪せたジーンズは、彼によく似合っていた。
「よく我慢したね、ナオ」
俺は短い言葉でナオを褒めてやり、抱きかかえるようにして彼を床の上に立たせた。 その時、ナオの長い髪が俺の頬を少しくすぐった。
板張りの床の上は白く光っていた。
俺はフラフラと立ち上がったナオの体を支えていた。 さっきまで降っていた小雨は完全に止んだらしく、もうシトシト降る雨の音が部屋の中に響く事はなかった。 2人きりの部屋には、張り詰めた静寂が流れていた。
そして、遂にその時がやってきた。

 「出ちゃう…」
ため息にも似たその声が、始まりの合図だった。
俺は最初にチョロチョロとわずかに水が流れるような音を聞いた。
ナオの顔を凝視すると、緊張が緩んだのか彼の口が半開きになっているのが分かった。
シャーーーーーッ
その大きな音が耳に響いた瞬間、俺はすぐにジーンズに覆われるナオの股間を見つめた。
ナオの右手はまだ股間に当てられていた。しかしその右手はもう役立たずだった。
彼の指の隙間から大量の水がどんどん溢れ出し、板張りの床の上にどしゃ降りの雨が降り注がれた。 そしてナオが降らせた大量の雨は即座に水たまりを作り上げていった。
かっこよく色褪せたジーンズは股間から太ももにかけてしっとりと濡れ、すでに黄色いシミができ上がっていた。
シャーーーーーッ
「あ…あぁ…」
どしゃ降りの雨の音とナオの呻き声が重なった。すると突然ナオの腰が砕けた。
彼は俺の手に支えられながらヘナヘナと自分の作り上げた水たまりの上へ座り込んでしまった。
あれほどお気に入りのジーンズを濡らしたくないと言っていたのに、 彼が水たまりの上に座り込むとジーンズの尻のあたりまでしっかりと濡れてシミがついた。
彼はがっくりと肩を落とし、目を閉じて、口を半開きにして、更におもらしを続けていた。
俺はどんどん広がり続ける水たまりに足が濡れてもまったく構わず床の上に立ってナオの姿を見下ろしていた。
水たまりの上に座り込んだナオの右手は相変わらず股間を押さえていて、その隙間からおもしろいように水が溢れ出していた。
ナオの右手も、彼のジーンズも、板張りの床も、そのすべてがびっしょりと濡れていた。
太陽の光はその様子をはっきりと照らして俺の目にすべてを焼き付けようとしていた。
輝く頬と、少し乱れた長い髪。ジーンズをたっぷり濡らして、それでもまだおもらしを続ける彼。
水たまりの上でへたり込むナオは、世界で1番可愛かった。
この時俺の股間はもう隠しようのないほど大きく膨らんでいた。
あまりにも興奮しすぎて何がなんだか分からなくなり、やがて俺も水たまりの上にへたり込んだ。 すると、尻の下にも足の下にも温かい水の感触があった。
俺のジーンズにも徐々に徐々に温かいナオのおしっこが染み込んでいった。
温かい水たまりの上でナオと向き合うと、彼と一緒に自分もおもらししてしまったような錯覚に陥った。


 やがてナオのおしっこの音が止んだ。
その時彼の作った水たまりはベッドの下の方にまで広がっていた。
すっかりおもらしを終えたナオは軽く目を閉じたままじっとして俯いていた。 静寂の戻った部屋の床には放心したナオと興奮気味な俺が座り込んでいた。 俺たちのジーンズを濡らす大きな水たまりは、太陽の光を浴びて輝いていた。
「ナオ…可愛かったよ」
俺は無言で俯くナオの髪を撫で、小さな声でそう言ってやった。
それでもナオはまだ放心しているようで、彼の体はピクリとも動かなかった。
今日のナオはいっぱいおもらししちゃったな…
俺は心の中でそうつぶやき、もう一度ジーンズで覆われるナオの股間へ目を向けた。
ナオの右手が音もなく彼の股間を離れたのはちょうどその時だった。 太陽に照らされるナオの右手はおしっこを浴びてしっかり濡れていた。
そして俺は、初めてその事実に気づいたのだった。
俺はその時、ナオの股間がわずかに膨らんでいる事を知った。
おもらしを終えた後の彼のものはいつもしぼんで小さくなっていたはずなのに、今日のナオはいつもの彼とは違っていた。
彼の股間のわずかな膨らみに気づくと、俺の下半身がうずいた。
もしかして、ナオも俺と同じなのか?ナオも俺と同じように興奮して股間を熱くしているのか?
その疑問が頭に浮かぶと、両の耳に自分の心臓の早鐘が大きく鳴り響いた。
俺は頭に浮かんだ疑問の答えを求め、震える右手をゆっくりとナオの股間へ近づけた。
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